2009/02/23
最後の最後でこぼれ落ちた13年ぶりのシード権
往路12位復路10位
(予想:往路20位復路16位総合19位・区間予想5区間的中→1区2区3区9区10区)
5区貝塚選手、7区清水和選手(予想では交代した椎谷がブレーキ)には謝らなければいけない結果となりました。この2人がうまく走ったので終盤までシード権争いをしましたので・・・。
区間、名前(学年)、区間タイム、区間順位、(総合順位)、トップとの差(シードラインとの差)
1区松原健太(1年)1時間5分24秒区間14位(14)36秒差
2区外丸和輝(3年)1時間8分30秒区間4位(14→4)2分56秒差
3区田村英晃(2年)1時間4分54秒区間14位(4→7)3分00秒差
4区瀬山直人(1年)58分26秒区間22位(7→11)6分06秒差
5区貝塚信洋(2年)1時間22分42秒区間14位(11→12)6分32秒差(39秒差)
6区木下潤哉(1年)1時間27秒区間11位(12→13)6分29秒差(46秒差)
7区清水和朗(3年)1時間5分43秒区間6位(13→12)7分05秒差(22秒差)
8区園田稔(4年)1時間7分09秒区間3位(12→7)7分20秒差(-1分21秒差)
9区谷一(4年)1時間12分29秒区間11位(7→7)8分33秒差(-1分42秒差)
10区倉持貴充(4年)1時間13分33秒区間17位(7→12)10分03秒差(44秒差)
○総合12位 11時間19分17秒
【優秀選手】外丸和輝…現3年生日本人最速ランナー
【敢闘賞】園田稔…箱根予選不出場も5人抜きの激走
【殊勝賞】山のメンバー…ここが粘ったから最後までシード争いできた
【喝】外丸以外の往路の平地メンバー…外丸の走りをまたも活かせず
ゴールまで残り3km、彼は喘いでいた。体は鉛のように重い、息はあがっている、口もあいている、眉間にシワも寄っている、フォームも完全に崩れている。先ほどまで一緒に走っていたチームは遠くかすんで見える。主将としてチームから信頼されて任されたアンカー。順調に7位争いを繰り広げていたが終盤まさかの失速。それでもこの地点では総合10位。このまま順位を保てば13年ぶりのシード権獲得となる。体は限界にきていたが主将の責任感で懸命に脚を前に進める。
その時、バイクカメラが、おそらく気付いていないだろう彼の横についた。それからそれほど間もなかった。彼の視界に突如、黄色のシャツと緑のランパンという鮮やかなユニフォームが飛び込んできた。そのまま視界から徐々に小さくなる。それは総合11位、つまりシード権外へ順位を落としたことになる。彼は抜き返そうと必死にもがいた。動かない体を無理矢理動かそうとした。しかし、抜いた相手は近づいてこない。相手の方が表情もフォームも歩幅も何もかも上だった。抵抗することさえもできず、そのまま相手は遠ざかっていた。それと同時に東京農業大学のシード権がどんどん遠ざかっていた―――
外丸の激走も攻めきれない序盤
東京農業大学はエース外丸を中心に、近年になく戦力が充実しており、久々にシード権獲得のチャンスであった。ただ、序盤は今一つという感じであった。1区を任されたのは1年生の松原。直前の1万m記録会で、松原は外丸に最後まで食いついた。その勢いを買っての起用だっただろう。しかし、終盤のペースアップに対応できずに区間14位。20kmにはまだもう一つ対応しきれていないという感じだった。
まあ、それでもスローペースの御蔭でそれほど前と離れたわけではない。外丸で取り戻すには充分の差であった。8.3kmの横浜駅前までに3位争いに食い込む走り。その後一時は2位にあがるまでの激走をみせ、2位と僅差の4位で中継。特にダニエルや木原についていったところにエースとしての執念があったように思う。しかもまだ3年生なので、来年はもっと楽しみである。とにかくこの地点では非常にいい感じであった。
しかし、前回の箱根や全日本同様、この流れを活かしきれない展開となった。3区の田村は走り始めてすぐに形成された3位集団の牽制から動けず、区間14位の走りで総合7位に。4区瀬山は序盤は8人による3位争いから真っ先に脱落。そのまま後続にも交わされブービーの区間22位で11位にまで転落。せっかくいい流れができても活かす事ができない点は今回も改善されなかった。このあたりはどうも直前に記録会に出たのは、力のある外丸以外は悪い方向に出てしまったようである。
細谷欠場のピンチも耐えた下級生
さて、予選経由のチームが特に問題になるのは山対策である。箱根予選の準備に忙しく、対策が遅れてしまうというのがよくあるパターン。しかも東農大は前回5区でシード権争いから早くも脱落してしまった。また前回の6区細谷が欠場してしまった。おそらく外丸の流れに乗って山へは最低でも一桁順位できて、山は多少順位落としても耐えて、復路でまた反撃だっただろうから、山で大きく後退してしまう、そんな不安もよぎった。
しかし、起用された2年生と1年生が懸命に10位ラインに執念をみせた。まず5区を任された貝塚はほぼ同時に走り出した中大大石とうまく競り合いながら順位ダウンを一つにとどめた。2年生ということを考えると、今後も計算できるかもしれない。そして6区の1年生木下は区間11位ながら1時間27秒の好走をみせ傷口を最小限に留めた。タイムも非常に良く、細谷が来年出場できないかもしれない。総合順位は山で2つ落としたものの、10位のチームとの差は46秒。7区以降の人材を考えると充分射程圏内。結果的にはシード権を獲得できなかったが、最後まできわどくシード権争いを繰り広げることができたのは彼らの粘りの御蔭だと思っている。
怒涛の追い上げもラスト5kmに落とし穴
二次エントリーの際、7区清水というのを観て一部で波紋を呼んでいた。前回1区で主力級の清水が繋ぎの7区に置かれたということは、当て馬で当日椎谷あたりと変更されるのではないかと思われた。と思ったらどうやら細谷が欠場した6区のフォローというような感じだったようだ(そういえば、冬のロードシーズンにばんばん出ている椎谷はなぜ欠場した??)。松原の成長もあったし、そういう役目になったのだろう。そしてその作戦は悪くなかった。清水は10位を捕らえることはできなかったが、区間6位の走りで上昇ムードを作った。そして8区でサプライズが起こった。
8区に起用された園田は高校時代はそこそこだったが、大学で伸び悩み、今回も箱根予選会不出場、全日本にはアンカーを任されたが区間二桁だった選手。大きな期待はしていなかった。僕としては前の集団が牽制してくれれば助かるかなという感じでみていた。ところが序盤に9位集団に追いつくと、遊行寺の坂道でスパート。そのまま前を走る2チームを交わして、8区ではおそらく最高となる5人抜きの快走。一気に7位に浮上し、東農大復活に華を添えた………かに思えたのだが…。
作戦に間違いは無かった。箱根予選で好走した谷、倉持と4年生を長丁場の9区10区に、しかも主将をアンカーに置くというのは私も予想する際、考えていた。9区谷は区間11位ながら順位はキープ。11位のチームとのタイム差は開き、シード権獲得は間違いないと思ったが、最後まで何が起こるかわからないのが箱根駅伝である。終盤、倉持が失速したのはおそらく7位集団を終始引っ張っていたことで力を使ってしまったのだろうが、これは致し方ない。倉持も赤峰(山学)、斉藤(中大)のハーフ公認タイムは65分台だが、倉持の箱根予選のタイムを換算すると64分前半となる。向かい風だし風除けになってしまったのは必然だったのかもしれない。更に疲れてきたところに、後ろから追いついてきた吉田(日大)に一気にペースアップさせられた。これが堪えたのかもしれない。
とにもかくにも、倉持はラスト5kmで大失速。残り2kmで選抜に交わされ11位へ、ゴール直前に国士舘にも交わされて、総合12位でのゴールとなった。しかしこれは倉持を責めるべきでないだろう。この時の東京農業の中ではキャプテン以外にアンカーは考えられない。最後はキャプテンにというのはチーム全員で思ったはず。キャプテンでダメだったのだから、今回の東京農業はどう区間配置をいじくってもシード権は獲得できなかった(←そういえば、くしくも農大の予想の時にこれ書いたんだよなぁ、オレ…)。区間順位も区間一桁は3つだけで、むしろ9区で7位にいたことが不思議なくらいだった。シード権を獲得できるチームではなかったのだ。次回こそオール区間一桁を取るくらいの活躍をし、完全復活をしてほしいところである。
おまけ・中大とのデットヒート
3秒→-11秒→1秒→-4秒→4秒→46秒→20秒→-41秒→0秒→44秒………これは中大と東農大の各中継所での差である。もう散々既出しているので今更感はあるが、実は最初から最後まで、抜きつ抜かれつはあっても中大とは差が1分以上開かないという大接戦だったのだ。特に往路はすごく最大で2区の11秒という状態だった。また復路でもアンカーに渡る地点で同時という凄まじい接線だった。
何度か危機(?)はあった。まず4区で瀬山が区間22位と大失速した。相手は梁瀬ということを考えると普通に考えれば、デットヒートも何もないのだが、なんと梁瀬も区間23位という成績。中大や農大のファンもこのあたりから意識しだしただろう。次に訪れたピンチは6区。中大の山下が59分台の快走をみせた。細谷という経験者を欠いた農大とは一気に開くかと思われた。総合順位もここが最大の3差となっていたのだ。しかし代打の木下が粘って46秒差に食い止めた。区間順位で一番差が開いたのは8区。農大が3位、中大が14位というものだったのだが、ここで6区の貯金が利き1分以上とはならなかった。またアンカーでも倉持が後半引き離されたが、斉藤も最後にちょっと失速しており、その御蔭で1分とは開かなかったのだ。
なんとまあ、大接戦の戦国駅伝らしい珍事であるが、更にこの出来事を際立たせるのは、片方がシード権を獲得できて、片方が落としたことである。往路終了地点で気付いていたファンが某掲示板に「一緒にシード権をとりましょう」と書いていたのが何ともいえない。今の箱根駅伝の恐ろしさを象徴する出来事ですので、書かせてもらいました。
来期への展望
いつまでも嘆いているわけにはいかないので来期の展望。
○卒業生出走メンバー
園田稔8区3位・谷一9区11位・倉持貴充10区17位
○在校生出走メンバー
松原健太1区14位・外丸和輝2区5位・田村英晃3区14位・瀬山直人4区22位・貝塚信洋5区14位・木下潤哉6区11位・清水和朗7区6位
○在校生補欠メンバー
細谷裕二・高山昇太・保坂優介・川内涼
うん、結構強いんでないかい。外丸、清水の主力は来年が最終学年でパワーアップしてくるだろうし、成績はともかく1年生が3人も箱根を経験できたことはいい材料である。後、山もいるので調整をミスらなければシード権獲得有力校となると思う。(勿論、予選通過してからの話だが)
また補欠メンバーにも今回見てみたかった選手が沢山いますので、選手層も問題ないだろう。今回の悔しさを糧にどこまで成長できるか楽しみである。