アマチュアだけど結果が実業団以上に求められるようになった関東大学長距離界。それに違和感を覚えつつも強化の為に体制を変えてきたチームが多くありましたので紹介します。
國學院大學 石川昌伸氏がコーチ就任
前任の松下氏がコーチを辞められた(部の外でトラブルがあったと噂されていますが、確実なソースがないのでこれ以上やめとく)のを受け、新コーチ加入させました。
石川氏は前田監督の母校である駒澤大学の出身。大学駅伝に出場することはできなかったものの、一般入試で駒沢大陸上部の門を叩き、4年間競技者として走り続けた努力家の人です(駒大は芽の出ない選手は容赦なく辞めさせられる事もあるので、続けるだけでも大変)。その後、武蔵野学院大でコーチ経験を経て、この度國學院大のコーチということになりました。
駒大初優勝メンバーとなったいわゆるエリートの前田氏と雑草の石川氏を合わせて3年連続シード権獲得を目指します。
国士舘大学 監督に下重庄三氏 コーチは小川氏と神山大樹氏
昨年は小川博之氏コーチの1人の態勢でしたが、大きく変わりました。さすがに実業団で現役を続けながら部をお一人で運営するのは無理があるでしょうしね。
まず監督に大物・下重庄三氏が就任。勿論、国士舘大学出身で53回~56回と4年連続で箱根駅伝を走っています。1年時は5区、2年以降は2区と全て重要区間を任されました。残念ながら区間一桁は獲れませんでしたが、実業団の日産自動車で素質が開花。アジア大会5千1万で入賞を果たしている。その後、福島県の田村高の監督を務める。現コーチの小川氏を初め、圓井彰彦・村上康則・武者由幸・長山丞など数々の後の箱根ランナーを育て上げていました。その経験は果たして大学陸上界でも通用するのかどうか。
また、新たなコーチの神山氏は80回大会、国士大が10年ぶりに出場を果たした時に7区を走った方です。3人とも国士大陸上部出身。戦力ダウンがささやかれている今季の国士舘ですが、早急な立て直しはなるか。
東京農業大学 コーチに谷口浩美氏
これはもう箱根駅伝の前からコーチ業をしているという話が出ていましたが、4月をもって正式に助監督就任となりました。
谷口氏といえばバルセロナ五輪での「コケちゃいました」がパッと思いつくだろうが、その前後の経歴を。高校は古豪中の古豪、宮崎県小林高校出身。高校1年の時、自身の失速で優勝を逃し、田舎から出てきた親の前でボロクソに怒られるという屈辱を味わい奮起。3年時にはエース区間の1区を走り2連覇に貢献した。
この功績が認められてか、当時の強豪校日体大に進学。当時の日体大には指導者がおらず、その影響で最初は馴染めなかったが、2年時に先輩の「ひょろひょろして面白そう」という理由で6区に抜擢されたのが転機に。3年連続6区で区間賞を獲得し、4年時には57分47秒の大記録を打ち立て、総合優勝に貢献する。当時は今より少し距離が短かったが、現行でも歴代のかなり上の方に位置するのは間違いないだろう。
その後、旭化成でニューイヤー駅伝やマラソンで輝かしい成績を残した後は指導者の道を歩む。01年から沖電気の女子陸上部の指導、08年から東京電力男子駅伝チームの監督を行った。東京電力時代は同チームをニューイヤー駅伝初出場に導いています。
ざっとこんな感じですかね。ところでこれだけの経歴を持つのに監督じゃないのは、現監督の前田直樹氏が大学の一つ先輩だからだ。特に57回大会は6区谷口-7区前田と襷リレーも行っている間柄だ。今年は別の意味で目立った東農大を、実力で目立たせることができるか。
日本大学 小川聡氏が復帰
ここ数年成績が急落していた日大に小川聡氏がコーチとして戻られるようです。どういう立ち位置になるのかはちょっとよく分からない。昨年度は1軍を鈴木ヘッドコーチが、2軍掘込アシスタントコーチがこれまで行っていましたが。
とにかく、近年に日大が優勝候補にあげられていた時代の指導者が戻った事はいい材料のはず。今いる選手たちも決して弱いわけではないので、再建に期待がかかります。
【追記】新留学生が入りました。 4月7日に行われる日大対抗戦の1500mのスタートリストにダニエル・ムイバ・キトニーという名前がありました。不確かな情報ですが5千13分59秒・1万28分49秒の持ちタイム、国際千葉駅伝にエントリーしていたらしいです
専修大学 伊藤国光氏が監督に就任
これが一番のビックサプライズでしょう。昨年、81回大会からの連続出場が途絶えた専修大学に超大物が監督に就任しました(そういえば他の部活でも監督交代があったようで全体的にスポーツを強化する方針っぽい)。
現役時代を全く存じ上げないので、情報をかき集めた中での紹介になりますが…伊藤氏は鐘紡で各種目で大活躍。1万、20㎞、30㎞、10マイルの日本記録を打ち立てるという功績を残し、1万の五輪代表に選ばれたこともある(幻のモスクワ五輪)。フルマラソンでも当時の日本歴代2位の2時間7分57秒の激走をみせたこともある
ただ、数々の戦績があるのに実はフルマラソンは24回走り未勝利。先の記録もこのレースの1位は児玉氏である。この理由は瀬古・宗兄弟がいたことや彼自身の独特のフォームやレーススタイルにも起因していた模様。苦しくなると特徴的な首ふり(これで人気を博していたが)になり、相手に残りの余力を読まれたとも言われるし、アベベ氏に憧れて本当の勝負ポイントの手前でのスパートが多かったとか。引退レースでは「世界最高の未勝利選手」と紹介された逸話がある。
その後、カネボウ監督としても高岡寿成選手や入船敏選手など世界で活躍できるランナーを育て上げた。11年10月に退任されていたが、この度専修大学の強化を図ることになった。勿論、その手腕を期待したいが、伊藤氏自身はこれまで箱根駅伝とはほぼ無縁の方。スケジュールも変わるし、これまでと扱ってきた選手の実力も変わる。ここ最近別の世代の指導をされていた方が転任されてもやや苦労する場面がちょくちょく見られるが、果たしてどうなるか。ひとまず、今年の箱根予選にどう合わせてくるか注目したい。
【追記】書き忘れていましたが、前監督の加藤氏はコーチとなりました。
創価大学 指導者のメンバーに川嶋伸次氏の名前が+留学生も
新体制の名前を見てびっくり。日体大で6区区間賞、旭化成でマラソンでシドニー五輪代表、東洋大監督時代に今の東洋の礎を築いた川嶋氏の名前がありました。東洋OBの久保田氏がコーチになっていた事は知っていましたが、箱根未出場の所に尽力されますか、驚きです。
また、創価大にも留学生が入るようです。ザンビアからやってきたハリー=ムレンガ選手。3千8分11秒だけが戦績のようです。7日の世田谷記録会と最初の日体大記録会を走るようです。果たして近いうちの初出場はあるのか?
麗澤大学 大石勝氏が監督に
以前は自衛隊体育学校で指導されていましたが、3年前にも麗澤大を率いていたことがあったとか。3年前といえば麗澤大が箱根予選で過去最高の成績を残した時であり、個人でもあの選抜アンカーで逆転シード権の立役者となった佐野広明選手がいた時です。ということは実は手腕高いかも?
この半年、飛躍した部員も何人かいましたが、その流れを更に加速させられるか。
駿河台大学 徳本一善氏が監督に 自身はモンテローザ所属
こちらも既に紹介しましたが、法政大→日清食品で活躍されていた徳本氏が駿河台監督に就任しました。
法政大時代は1500から20㎞まで全て高レベルでこなす才能あふれるランナーでしたが、それ以上に茶髪(本人いわく、法政カラーのオレンジ髪)にサングラスというスタイルが話題になり大きな注目を集めました。勿論、箱根駅伝でも大活躍。2年時は1区でスタートからポーンと飛び出し区間賞。3年時は華の2区でラストスパートで駒大・神屋選手を振り切りトップ中継。そのままチームはあわや70年ぶりの往路優勝か、と思わせる活躍。実力だけでなくその影響力も凄かった。4年時にレース中に肉離れを起こし涙ながらの途中棄権というショッキングな出来事があったが、その後法政大は数年シード権を獲得、何か一発やるチームカラーとなったのも彼の影響だろう。
実業団時代も5千で日本選手権制すなどトップレベルのスピードを誇っている事を印象付けた。また、研究熱心としても知られ83回箱根駅伝でのゲスト解説で碓井氏を困らせるくらいの博識ぶりも披露していた。そして昨年よりコーチを行っていた駿河台大学の監督に。そのまま引退かと思われたが、自身のブログでモンテローザに所属して競技者としても継続することを明らかにした。
駿河台大の部員自体はやっと5千15分を切るランナーが何人かいる、という状況だが、本人の理論と影響力でどこまでチーム強化を図ることができるか楽しみだ。
東京国際大学 横溝三郎氏を監督に本格的にスタート
こちらは昨年から発表されていましたが、部員が揃い本格的に箱根駅伝に向けてスタートです。監督は中央大で35回から38回大会で箱根駅伝を走り、4年時にアンカーで区間賞を獲得した横溝三郎氏。箱根駅伝の解説でも聞いたことあるだろう。ただ、新鋭校が70歳を越えられた方を監督に迎えたのはちょっと驚きでしたが…。
東京国際大自体は5年で箱根出場を目指すと公言。正直、箱根舐めるなよと思っていますが、スカウトは5千14分台の選手を7人獲得に成功、またそれ以上に出身高校が名門校ばっかりでパイプ作る気満々なのも目を引いた。とにかく本気であることは確か。奇跡の出場はあるのだろうか。
【追記】日体大記録会にエントリー ルウル=ゲフラシラシェ選手とジロ=テェスファイ選手
以上、自分が把握している指導陣の交代です。
抜けているのがあったら教えてほしいです。後1000字くらい書きこめるので無理やりまとめますので。
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