2009/04/16
箱根駅伝総評~山梨学院大学
チャンスだっただけに悔やまれる失速
往路5位復路11位
(予想:往路4位復路7位総合3位・区間予想4区間的中→2区5区7区9区)
順位は5区と8区のブレーキの分、ちょっと外してしまったかなぁ。読みはまずまずだったのだが。区間については1区松村を敢えて外した予想を下のでこんなものか。後は小山とか大谷とか微妙な故障者が影響してしまったか。まあそこそこ満足だ。
区間、名前(学年)、区間タイム、区間順位、(総合順位)、トップとの差(シード権との差)
1区松村康平(4年)1時間4分54秒区間4位(4)6秒差
2区M・モグス(4年)1時間6分04秒★区間新★(4→1)-2分40秒
3区宮城真人(4年)1時間4分50秒区間10位(1→1)-16秒差
4区後藤敬(3年)56分08秒区間4位(1→2)48秒差
5区高瀬無量(2年)1時間25分41秒区間22位(2→5)4分13秒差(-2分15秒差)
6区渡辺清紘(4年)1時間00分26秒区間10位(5→5)4分09秒差(-1分57秒差)
7区岩田真澄(3年)1時間5分33秒区間4位(5→5)4分35秒差(-2分10秒差)
8区岸本匡(3年)1時間11分04秒区間22位(5→12)8分45秒差(43秒差)
9区中川剛(3年)1時間11分07秒区間賞(12→9)8分36秒差(-1分39秒差)
10区赤峰直樹(2年)1時間12分09秒区間8位(9→6)8分42秒差(-1分11秒差)
○総合6位11時間17分56秒
【優秀選手】M・モグス…貫禄の区間新
【敢闘賞】後藤敬…昨年のリベンジ
【殊勝賞】中川剛…山学日本人6年ぶりの区間賞&シード争いから脱却
【職人男】松村康平…1区で外し無し
【喝】高瀬無量、岸本匡…この大ブレーキで優勝のチャンス逃す
兄を亡くした辛さ跳ね除け、2年連続区間新
モグスという大砲がおり、日本人選手も駒が揃い、いつになく戦力が充実していた今回の山梨学院大学。駒大早大の2強崩しの一番手にあげられる程の高評価だった。1区松村はもはや1区の職人男。今回は前半から前に出たりしたりしたのにも関わらず、やっぱり終盤まで先頭集団に付いていって、区間4位でトップと6秒差とほぼ完璧な形でモグスに襷を渡した。これだけ何度も1区を走って全く失敗がないという選手は珍しいだろう。その労をねぎらう意味で『職人男』という特別な賞を個人的に送りたいと思う。
さて、その松村から2区で襷を受けたモグスだが、不安があった。今秋はいつもよりちょっと調子が上がっていなかった。全カレでは今まで負けたことがなかったダニエルに不覚を取り、全日本では最長区間を回避したくらい。更に12月初旬に兄を亡くすという不幸に見舞われた。身体的にも精神的にもダメージを受けた状態で最後の箱根を迎える事となった。
そのモグスは最初の1kmを抑えて入るとそこからグングン加速。2km過ぎにはトップに立つと完全な独走態勢を築く。辛かっただろうが、自身最後の駅伝(実業団でマラソン中心の練習をするため)でまだ味わったことの無い駅伝での優勝のため、懸命に走った。山学はモグスが後ろを引き離すだけ引き離し、後は粘るだけ粘るというのが必勝のパターン。ラスト1kmで上田監督が「モグス頼む!!」と叫んでいたのもそのためだろう。モグスは最後までペースは落ちず、昨年の自分の記録を更に更新する1時間6分04秒というとてつもないタイムで駆け抜け、2位の日大には2分40秒、およそ1kmもの大差をつけた。
走って当たり前と思われがちな留学生だが、モグスの精神力は日本人を超えているのではないか。今後、持ち前のスピードと日本で培った精神力でマラソンに挑戦する。才能が更に開花することを箱根ファンとして願いたいところである。
箱根の洗礼その①
3区に入ったのは小山ではなく宮城。どうやら小山が自転車事故でいけなくなったらしい(喝ものだが、出場していない選手は入れないという方針なのでパス)。宮城は2年前3区経験者だがその時はモグス失速の動揺もあってかブレーキとなった。しかし、今回は4年生らしく安定した走りで首位をキープ。ただ、竹澤(早大)には大きく差を詰められ、16秒差にまで迫られたのは致し方ないだろう。4区後藤は追いついてきた三田(早大)に懸命についていったが、中間点を過ぎたあたりで徐々に引き離される。ただ、ここからの粘りは良かった。後藤は前回も4区を走ったが区間19位と力不足だった。しかし、今回は遅れてからもペースを落とさず成長した姿をみせた。最終的に昨年より1分30秒近くいい区間4位で走破。早大のとの差も1分以内に留め、往路優勝の可能性を残して山登りに入った。
しかし、ここで山学は箱根の怖さを味わうこととなる。5区を務めた高瀬は昨年の経験者。当時1年生ながら区間6位と健闘。今年は日本人エース格としての活躍が期待されていた。秋になってから調子があがっていないことに一抹の不安はあったが、高瀬本人も気合は入っていた。じりじりと前の早大を追い上げていき、中間点手前では追いついてしまった。このまま山学が行くのかと思った所でCMが入った。CMが開けたら高瀬がまず先頭にいるのではないかと思った駅伝ファンが多かったはずだ。
ところが信じられない光景がCM明けにはあった。先頭は再び早大が奪い返していて、高瀬は苦しげな表情でずるずると後退していっていたのだ。後に判明した原因はやはり体調が上がっていなかったとのこと。そして早大に速く追い上げようと、一番勾配がきつい所でペースを上げすぎてしまい、スタミナが一気に奪われたとのことだった。そこからの高瀬は歩を前に進めるのがやっとの状態。次々と交わされていき、結局往路5位。トップよりシードラインを気にしなければならない位置となってしまった。
結局、高瀬が自分の体調に合わせた走りが出来なかった所に最大の要因があった。これで往路優勝はおろか総合優勝も実質潰えたのでやっぱり喝というところだろう。ただ、高瀬にはいい経験にはなったはずだ。3年4年も5区の可能性が高いので、今後はどのように走れば一番速いタイムで駆け上がることができるか、考えながらレースをすることができる。一つ高いレベルにあげるために箱根が浴びせた洗礼だろう。高瀬が次の箱根でとのような走りを見せるか注目だろう。
箱根の洗礼その②
優勝は厳しくなったが、それでも総合3位はまだ狙える状況であった。6区渡辺は最初の最後の箱根で何とかまとめあげ、5位をキープ。7区岩田も初の駅伝で大健闘の区間4位。いい感じで襷が繋がっていた。しかし、またここで落とし穴が待っていた。
8区の岸本は叩き上げ組の選手。努力で掴んだレギュラーの座だったが、箱根は岸本にも洗礼を浴びせた。今まで見たこともない声援や感じたことの無い雰囲気に圧倒されてしまい、完全に自分を見失ってしまった。調子が悪かったわけでも実力が無かったわけでもないのに81分かかってしまった。これは区間21位の選手にも2分差あるという大ブレーキだった。これにより、5位争い、あわよくば3位も目論んでいた山梨学院は一気に下降。何と総合12位まで転落してしまったのだ。
経験がないというのは時にはプラスになることもある(5区は辛さを知らない方が走れることもあるそうな)のだが、やっぱり大舞台となると影響の出る選手は露呈してしまうようだ。上田監督も自信を持って送り出した選手なので、練習では強かったのだろう。ただ、大舞台で結果を残すためには精神力が足りていなかったのだろう。ただ、経験できただけでも強みだろう。後述する中川も前回は全くもって力を発揮できなかった。来年はぜひともリベンジを果たしてほしい。
日本人エース誕生
とチームはそんなことを語っている場合じゃない。7区までは考えていなかったシード権争いの渦中にいきなり身を投じることとなった。後2区間で果たして巻き返せるか問題だった。前回の山梨学院はモグスの貯金をじわりじわり削っていくレースだった。前回であったらおそらく対応できなかったと思われる。しかし、今回は違った。9区には昨年の経験を基に逞しく成長した中川が担当した。
中川はスタート後すぐに国士館を交わして11位に浮上すると、強い向かい風の中、一人で追いかけ始める。権太坂で帝京大を交わし早々とシード権内へ。その勢いは止まらず、終盤は7位争いを展開するほどだった。動揺してもおかしくない状態でたった一人で向かい風の中、ひたすら追い上げたのはかなり凄い。しかも山梨学院の日本人として79回大会岩永以来、6年ぶりとなる箱根での区間賞だった。しかも復路のエース区間9区でというのは大きい。久しぶりに日本人エースと呼ばれて相応しいランナーが誕生した瞬間だった。コスマスがいるので難しいかもしれないが、76回大会以来の日本人2区を走ってもらいたい、そんな気持ちも出てくる程であった。
これに勢いを得た山梨学院はこれまた代役出走となった赤峰が最終区で力走。総合順位を6位にあげフィニッシュした。順位は前回と同じだが、今回は一旦切れてしまった流れを再び戻すことができたのは収穫だろう。ただ、悔しいのは5区8区で約8分無駄にしていることだ。これだけでトップについていた差のほとんどが埋まる。更に3区に小山を配置できていれば…。たらればを考えてはいけないのだろうが、どうしても考えてしまうのを許してほしい。該当者の高瀬と岸本、小山には来年必ずリベンジを果たしてほしいところだ。
来期の展望
来年こそ優勝を誓う山梨楽員の来期の展望だ。
○卒業生出走メンバー
松村康平1区4位、M・モグス2区1位、宮城真人3区10位、渡辺清紘6区10位
○在校生出走メンバー
後藤敬4区4位、高瀬無量5区22位、岩田真澄7区4位、岸本匡8区22位、中川剛9区1位、赤峰直樹10区8位
○在校生補欠メンバー
O・コスマス、小山大介、大谷康太、田口恭輔
とりあえず、まず目がいくのは1区の穴を誰が埋めるかということだろう。ずっと松村が務めてきた1区。実力的には小山あたりだろうか。モグスの穴はコスマスや大谷(そういやどうしたんだ?)が2人がかりで埋めてくれればいいかなと考えている。駒的にはこれで9人で結構揃っているか。後は、今回の渡辺のように4年生が誰か出てきてくれればいいなと思う。近年即戦力が入学してこない山梨学院であるが、4年間掛けて選手を育てることは上手くなっている。今回のメンバーと新戦力が融合すれば、きっと目標に手が届くはずである。
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