昨日をもって、韓国テグ世界陸上が終了致しました。男子100mボルト選手のフライングから始まり、デイリープログラムの呪いなど様々な事がありましたが、無事閉幕しました。何だかんだで心に刻まれた瞬間が数々あったと思います。前半戦は振り返りましたので、後半戦について書きたいと思います。
女子やり投げ…逆転に次ぐ逆転、アバクモア選手が優勝
期待されていた男子の村上選手が今回は決勝ラインに行けず敗北。85mの潜在能力があると言われながら発揮できませんでした。そこまでいかずともいつものように83m前後いければ通過できたのですが、前回のメダルを意識しすぎましたかね?逆に男子ほど注目を集めていなかった女子の海老原選手が何と決勝進出!これはびっくりしました。決勝では惜しくも9位でしたが、よく頑張りました。男女ともこの種目これから注目ですね
頂点の方はドラマがありました。5投目でスポタコバ選手がそれまでトップだったアバクモア選手を71m58の好記録で逆転。これでスポタコバ選手が金メダルを手繰り寄せたかに見えましたが、直後にアバクモア選手が世界記録にも迫る71m99の大投擲!このハイレベルかつ逆転劇にはドラマ性を感じました。非常に見ごたえがあった試合だと思います。
女子100mH…ピアソン選手優勝、ようやく韓国の呪い解ける
女子の100メートルハードルは優勝候補だったピアソン選手が見事に優勝。12秒28のタイムは世界歴代4位というタイム。走りも非常に正確性が高く、群を抜いて強かったです。ただ、それだけで記事にしたわけではありません。あるジンクスを打ち破ったのです。実は韓国から毎日発行されるデイリープログラムの表紙を飾った選手、いわばボルト、アリソン、イシンバエア選手などが誰も優勝できないという事態となっていたのです。この日はピアソン選手が表紙。優勝できるか大きく注目を集めていたのです。本人もそのジンクスを知っていましたが「誰にも邪魔させない」という強い気持ちで打ち破ってくれたようです。この精神力は高く評価していいと思います。
男子200m…ボルト、世界新ならずもしっかり優勝
衝撃のフライングから余計に注目を集めていたボルト選手。さすがに少しスタートに気を遣ったか、予選・準決勝ではリアクションは非常に遅かった。それでも本人談「(フライングの)翌日には気持ちを入れ替えることができた」ということで決勝には不安が無かった。世界新まではいかなかった(3レーンということで体の大きなボルト選手には遠心力が大きくかかるのでスピードが出せなかったぽい)が19秒40でさすがに強さで優勝。またうまく調子と運が合えば記録更新してくれるでしょう。注目は2位3位のディックスと白人のルメートル選手。ボルト選手とは大きく引き離されずに19秒70、19秒80というタイム。特にルメートル選手はボルト選手も認める強さ。これから世界の短距離は更に盛り上がりそうです。
男子マラソン…強し!キルイ連覇、日本勢は粘って団体銀
女子マラソンではケニア勢が表彰台を独占しましたが、男子もケニア勢は強かった。特に前回大会で優勝していたキルイ選手は圧倒的だった。序盤のスローペースから徐々にペースアップ。そして中盤満を持してスパート。25㎞~30㎞は14分18秒とちょっと日本人では考えられないスピードの切り替え。終盤になっても躍動感があって何だかフルマラソンを見ている感じがしませんでした。北京五輪から急速に高速化、悪条件になっても2時間6分7分台が普通に出る様になって世界は凄いなぁとただ唸るしかありませんでした。
そして日本勢。自己ベストも2時間8分台が一人のみという状況だったので、正直入賞も難しいと思っていたのですが、堀端選手の成長は凄かったですね。内定を決めてから何か目覚めたかトラックの自己ベストを続々更新していましたが、一気に7位入賞にまでこぎつけました。最後6位に上がれれば最高でしたが、現状の力をすべて出し切ってくれたと思います。宗監督が『未完の大器』と呼んでいましたが、若い堀端選手が入賞してくれたのは非常にうれしいニュースです。そして安定した走りで10位で飛び込んだのは中本選手。大学時代まではあまり目立つ存在ではなかったのですが、今回のメンバーでは一番の安定感(夏場のマラソンでは安定感が求められると思い、日本人最上位予想は彼だった)を誇るにまで力を付けていました。クレバーなレースだったと思います。
日本人3番目には注目を集めていた川内選手。序盤集団の前に居過ぎた影響か15㎞付近で苦しくなり30位あたりとなっていたのですが、30㎞以降踏ん張って最終的には18位にまで浮上してくれました。東京マラソンはちょっと出来過ぎ感があったので、実力的にはこのくらいか。でもラスト2.195㎞の7分07秒は日本人1番。自分を追い込める能力の高い川内選手らしさは出たと思います。本人も納得いっていましたね。そして彼ら上位3人の頑張りで団体銀メダル獲得!まあ、これはモロッコの選手が積極に行ったが故の失敗、エチオピア選手のメダルを取れなかったら諦めるという考え方(完走したのは2人で順位さえ付かず)に助けられたので手放しに喜べないですが、終盤は全員粘る等こういうところは日本人らしさは出たのかなと思います。尾田、北岡選手に付いては、アキレス腱を痛めた、今年に入って何度も怪我などもあったらしい。万全で挑めなかったらこんなものだと思います。
一つ思った事があるのですが、男子も女子も3位とは大きく差は付いていない。つまり今ある日本記録に迫れる力のある選手が出てさえくれば金メダルは厳しくても、メダルは全く不可能ではないなあと…。頑張って手を伸ばせば届く範囲ですので、陸連の方々の強化策に期待したい(個人的にはペースメーカー付の試合じゃ勝負強さが身に付かないと思う)です。
女子800m…セメンヤ連覇ならず、サビノアが優勝
性別疑惑などで陸上界を騒がせたセメンヤ選手(肩の肉の付き方がどうみても男性にしか見えないのですが(^^;)が今回も強さを見せるのか注目していました。が、若干体が絞り切れておらず重そうな感じであの爆発力は出ず2位にとどまりました。今回はロシアのサビノア選手が素晴らしいラストスパートで優勝を果たしました。ただ、セメンヤ選手ちゃんと練習したら世界記録更新できそうな気がします。色々問題が取り沙汰されていますが、今後の動向に注目です。
男子4×100リレー…一番最後の種目で今大会初の世界記録
今回オオトリ種目となった4×100リレー。日本は男女とも残念ながら予選落ち。女子はともかく男子はちょっとショックだったのではないでしょうか?ただ、今回男子は100mで誰も標準記録を突破できず、200mの選手中心の配置になってしまいました。いくらバトンパスの精密度を上げても、個々の能力が今回はいつになく低かった。今回は負けるべくして負けたと思います。
さて、決勝ですが、最後はボルト選手がやってくれました(そもそもボルト選手の為にこの種目が最終種目になったとか?)。予選は体力を温存して欠場し、決勝の舞台でアンカーで登場してくれました。3走まで金メダリストのブレイク選手などの力走でトップでバトンを受け取ると、完全に独り舞台。バトンを受け取った時にバトンを持ち帰ると、基本的にタブーな事をやったのですが、それでも世界新記録の37秒04というタイムを叩きだして優勝。ここまで世界新記録が出ていなかったのですが、最後の最後で世界新。中々スカッと致しました。ちなみにジャマイカはアサファ・パウエル選手を今回怪我で欠いていました。すなわち、夢の36秒台も視界に捉えています。来年の五輪、再来年の次回大会が楽しみです。
最後に、今回頑張って世界に挑戦、または日本選手権などで世界行きの切符を目指して頑張ってくれた日本人に対してちょっとだけ苦言を。室伏選手を除いて、中々安定して成績を残してくれる選手がいないなぁと。男子は前回活躍したやり投げの村上、マラソン入賞の佐藤、100m準決勝の塚原選手など、女子はマラソンメダルの尾崎と入賞の加納、1万入賞の中村選手等前回活躍した選手が残念ながら順位が落ちたり出場できなかった選手が多かったです。やはりお手本となる選手がいないと中々強化が進みづらいと思います。エースと呼べるような存在な選手の台頭を待ちたいと思います。
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